登入毎日の仕事で疲れる主人公が、『楽な仕事』と誘われた宇宙ジャンルのVRゲームの世界に飛び込みます。 ゲームの中での姿は一つ目のギガース巨人族。 乗艦であるハンニバルは鈍重な装甲型。しかし、だんだんと改良が加えられていき……。 大出力レーザービームとミサイルが飛び交う艦隊戦。 更には突如現れるワームホール。 その向こうに見えたのは驚愕の世界だった……!? 様々な事案を解決しながら、ちっちゃいタヌキの砲術長と、トランジスタグラマーなアンドロイドの副官を連れて、主人公は銀河有史史上最も誉れ高いS級宇宙提督へと躍進していきます。
查看更多……【よろしくお願いします】
『よろしくお願いします』
うん?
「よろしくお願いします」「よろしくお願いします」
……いつもの営業所の風景か。
同僚が電話口で必死に顧客に頼み込んでいる。 少しばかり季節外れの扇風機の音もうるさい。 お茶をいれるためのやかんの蒸気の音も聞こえた。 営業所の備え付けのソファーで仮眠をとっていたことを思い出す。 「菱井先輩! 約束の時間です、起きてください!」ああ……。
後輩に起すよう約束していたのを思い出す。
自分の机に置いてある時計を見ると22:30だった。 時計の隣には、二番目の兄が南米に墜落したと噂になった宇宙船モドキの横で笑っている写真が目に入る。 「先輩! 行ってきていいですか!?」「ああ、いいよ」
後輩の後藤は喜んで営業所を出ていった。
しかし、他は誰一人として帰らない。 今日は社を挙げたキャンペーンの最終日。我々は営業ノルマを達成せねばならなかった。 ……30分後、支店長室。 「おう、菱井。新入りを帰させたようだな?」「はい、とても大切な用だそうで……」
ゴッ!! 私がそう答えるや否や、私の心に鈍い音が響く。 目の前をゆっくりと白い吸い殻が舞う。 新島支店長のたくましい右手に握るガラスの灰皿が、私の左頬をしっかりと捉えていた。……痛さによって、左ひざを絨毯に突く。でも手加減したのだろう、意識はある。きっと痛いだけだ。
「あと何ロットだ?」「あと三つです!」
私は膝をついたまま、鼻をすすりながらそう答えた。我々は反社勢力というわけではない。しかしこの本社工場が作ったキャンペーン企画商品を売り切らねば、明日にもこの僅か8名の支社は吹き飛び、この街の雇用が8名失われる。
結局、世の中はそういったものだ。 ひょっとすると私に愛と勇気が不足しているだけなのかもしれないが……。 「あと三つ何とかしてみせろ!」「はい……」
後藤を勝手に帰らせた手前、支店長にはそう答えるしかなかった。
☆★☆★☆★日付が変わるころ、私はコンビニにいた。
「……おっと」買おうと棚からとったチューブのショウガを床に落とす。
疲れすぎて若干眩暈がする。 左頬を冷やす氷も買わねば。 こういう時、温かい家族を思い浮かべることがある。優しい妻に可愛い子供たち。 しかし毎月の給料明細と残業時間が冷酷な現実を教えてくれ、きちんと目を覚ましてくれていた。 いつか今よりもいい仕事に就けたら、きっと家族ももてるだろう。 例の3ロットは結局知り合いの社長に買って貰った。こういう時、日ごろの接待の成果が如何なく発揮される。接待を馬鹿にする人の気持ちが知れない。『結局何が大切なのか?』
と自分に聞かれても知る由もないが、次の営業キャンペーンは3か月後にまたやって来る。後藤はせいぜい今のうちにデートを楽しめばいいと思った。
「いつもありがとうございます」
孫が3人はいそうな店員にフレンドリーに挨拶される。
ああいった老後もけっして悪くない。 今、現場は人手不足だ。高校を出たばかりの後藤に『デートくらいで……』と言ってしまえば楽だが、それを言えば明日から過酷な営業を一人少ない七人でやる羽目になる。もちろん補充はない。 過酷だ……な。バブル期に入社した業界の大先輩に『すまんな!』と冗談に言われるほど、我々の業界の現場は疲弊し切っていたのだ。
帰宅した後、シャワーを浴びて寛ぐ。窓の外から流れる虫の声が実に心地よい。 風流だな、自分も年をとったと自覚する。 実はまだ20代なのだが……。 グツグツとパスタが茹る音が聞こえる。 PCで無料のWEB小説を眺める。 頭が疲れすぎて、読むことはできないが……。 PIPIPI……。 突然に携帯電話が呻く。 ……うるさい! 何時だと思っている!? しかし、誰だろうか? 【メールが着信しました】 10歳も年の離れた二番目の兄からだった。 支店長からという最悪のケースは避けることができた。 しかし、なんにしろ疲れていて読みたくはない。 が、祖母の家に引き取られ、母と私と弟にお金を送り続けてくれた兄なのだ。 疲れていても、その恩に報いるべきだと一念発起してメールを開く。 さもたいそうな理由だと自嘲もするのだが……。 タイトルは『楽な仕事を紹介してやる』だった。「敵接近! 距離360光秒!」「敵影、約860隻」「戦闘準備!」「揃いも揃ってやってきたか……雑魚どもめ!」 俺は神らしく、好き放題させてもらった。 6か月もそうこうしていたら、カリバーン帝国どころか、ルドミラ教国まで連合して攻めてきやがった……。「改良型惑星破壊砲用意!」「了解! エネルギー充填開始します!」「エネルギー充填50%」「……80%」「……100%! 充填完了!」「敵艦隊めがけて発射しろ!」「了解! 発射します!」 特大の光条が敵艦隊先頭に命中。 恒星を思わせるほどの光球が現れる。 ……が、「!? 敵艦隊被害なし!」「敵艦隊先頭、識別装甲戦艦ハンニバル!」「……!?」「馬鹿な! あの戦艦は惑星破壊砲を単艦で弾いただと!?」「敵艦隊、なおも接近!」「やむをえん、通常砲撃戦用意!」「了解!」☆★☆★☆「特型電磁障壁解除!」「解除完了ですわ!」「全艦砲撃戦用意!」「装甲ミサイル艦、艦列前へ!」「砲撃用意完了ポコ!」「撃て!」 私はハンニバルの司令席にて、全艦に砲撃命令を下す。 今回私は、カリバーン・ルドミラ連合軍の臨時の艦隊司令長官を務めていたのだ。「長距離ミサイル発射!」「艦載機発進用意!」 ……大出量のレーザー光条が飛び交い、ミサイルが炸裂する。 光球が次々に産まれ、文明の叡智を残骸へと変えていった。「お味方、優勢です!」「よし! これよりハンニバルは、敵左翼に横撃をかける!」「了解ですわ!」「機関全速!」「取り舵一杯! 側砲射撃開始!」「斉射ポコ!」 ハンニバルは僚艦であるオムライスとジンギスカンを率い、高火力と高機動をもってして、敵左翼の艦列を切り崩す。――次第に、敵に混乱の色が見える。「戦略打撃戦艦ペテルギウス発見!」「大きいポコ!」 ……敵艦列を切り裂くと、ついに敵旗艦にお目見えする。 砲術長が言うように大きい。 多分ハンニバルより大きかった……。「機関に短期ブーストを掛けろ!」「ブースト了解ですわ!」「ブースト完了! 機関出力255%! 限界です!」「マイクロ・クエーサー砲用意!」 機関で生み出された大量のエネルギーが、艦体下部のマイクロ・クエーサー砲に流れこむ。 そのあまりの大エネルギーに、艦がきしむ音が聞こえる。「用意良し、エネル
――標準歴5年4月。 濃い化粧と、お歯黒という独特の容貌のジョー・キリシマ提督は、ラヘル星系の富豪たちに乞われ、傭兵部隊を率いて星系防衛の任についていた。「トロストとかいうやつ何者ぞ?」 彼はクノイチ集団と呼ばれる暗部の女性情報工作員の頭領という別の顔もあったのだが、トロストの急速な台頭を掴み切れないでいた。 彼はラヘル星系の主星ロンギヌスを後背に、艦艇100隻を布陣。 トロストの艦隊を待ち受けた。 トロストはグングニル共和国の艦艇300隻を動員し、このラヘル星系に侵攻してきた。 300対100では勝てそうにないのだが、このラヘル星系の主星ロンギヌスは、姿かたちこそ緑の惑星だが、それは色彩等を意図的に変化させた擬態であり、内実は移動用チューブが張り巡らされたメトロポリスであり、黒鉄でできた人口都市惑星だった。「ほっほっほっ、トロストとやら、目に物を見せてくれん!」「重装甲ミサイル艦の戦列を前へ出せ!」「了解!」 ジョー・キリシマ提督は、グングニル共和国きっての高家の出である。 そのプライドや自信も相当のものだった。「トロスト艦隊接近、射程内に入りました!」「砲撃戦開始!」 トロストとジョー・キリシマ提督は、お互いの射程圏に入ると射撃を始めた。 お互い、戦場の長槍兵ともいえるミサイル艦艇を前に出し、主力は温存した戦い方だった。 そもそも、これがこの世界の戦いの常道であり、ハンニバルのように先頭をきる旗艦は珍しかったのだ。「長射程対艦ミサイル来ます!」「迎撃ミサイル発射! 対空砲応射せよ!」 双方、ミサイル艦の長射程ミサイルに対処。 戦いは次のフェーズに映る。「重巡洋艦と戦艦を前に出せ! 大口径レーザーで敵を始末しなさい!」「了解!」 ジョー・キリシマ提督は、ミサイル艦艇の後背から主力戦列艦を投入。 長射程の大口径砲の光条で、トロスト艦隊を攻撃した。 更には惑星ロンギヌスからの砲撃もトロスト艦隊を襲う。 戦いはジョー・キリシマ提督に有利に思えた。 ……しかし、異形のモノが戦場に現れる。「提督! 敵戦列から謎の宇宙海獣が現れました!」「なんですって?」 お歯黒の提督は慌てる。 カリバーン帝国の宇宙海獣戦術には、以前からほとほと手を焼いていたのだ。「こ、これは? カリバーン帝国の戦術! なぜ奴が!?」 ジ
――暗がりで試験管を眺める男。 奴の名はトール。 少し前まで技術少将を務めていた。 リーゼンフェルトが戦いに負けたので、奴と俺はとある辺境星系へ逃亡する羽目になった。 奴の発明品は、宇宙海獣操縦装置、ダークマター潜航艇、惑星破壊砲の三つ。「トロストさん、新しい体は大切にしてくださいね」「おうよ」 ……さらに奴は、俺に新しい体をくれた。 96%は機械なのだが、パワーとスピードが凄い。 ライオンにも素手で楽に勝てそうだ。 そして新しい乗艦も……。 元・クレーメンス公爵元帥乗艦、戦略打撃戦艦ペテルギウス。 全長1852m全幅243mの巨大な戦闘艦だ。 俺たちが逃げるときに乗ってきた船だ。 星間ギルドに頼み、最低限の乗員をかき集めた。「いざ、母なる地球ってか!?」 俺はトールの奴と別れ、アルデンヌ星系にあるワームホールを目指した。☆★☆★☆「……な、ない!?」「ワームホールがないぞ?」 俺は目をこする。 地球に繋がるワームホールがない。 すぐさま、トールの奴に連絡をとった。「トロストさん、ワームホールってのは気まぐれなんです。ときたま現れては消えてって感じなんです」「じゃあ次はいつ現れるんだ?」「明日かもしれませんし、何万年後かもしれません」「……ふ、ふざけんなよ!」 俺はモニターに怒鳴りつけ、通信を切った。 地球で神になる以外、俺にふさわしい仕事ってないぞ?「……ああ、ワームホールが現れるまで、この世界の神にでもなっておくか……」 俺にはカリバーン帝国国有企業の株式がある。 この財力をもってして成りあがってやるぜ! 俺は仕方なく、この日からこの世界の神を目指すことにした。――翌年、標準歴4年4月。 トロストという男が、突如グングニル共和国の地方星系の議員として当選した。☆★☆★☆――標準歴5年1月。 ハンニバル開発公社は、ラム星系周辺の開発と発展に成功。 カリバーン帝国第二の巨大企業となった。 その利益に伴い、ハンニバルも大改修を行う。 防御力を中心に底上げし、全長1600m級の双胴の艦体は、半ば動く要塞と化してきた。 さらには、内部に兵器工廠や研究開発室も設けていた。「大きいポコ♪」「大きすぎて入港できない宇宙港も出てきたクマね」「ふむう」 ……まぁ、そういうところは衛星軌道上に
「火をお付けしますね」「ありがとう」「……ふぅ」 私はリアルの世界では吸わないタバコをふかす。 お酒と煙草、人類の永遠の友である。 この煙草の火は、今も副官殿が付けてくれている。 ……この点、大いに贅沢で、私は幸せ者である。 ……我々の世界は4次元で構成されている。 縦と横と高さと、時間の四つだ。 しかし宇宙には、10個もの次元が存在すると言われる。 その未解明な世界の一つは重力が有力である。 その他にも、思念体の世界があるかもしれないし、ゲームの世界があるかもしれない。 さらに言えば、未解明の次元は6つとは限らない可能性もあるのだ。 ……その一つが、今私が煙草をふかしている世界だとしても、何ら不思議はないのである。 地球の世界と、この世界はそもそも時間軸が合っていなかったのだ……。 輪廻転生とか、異世界に旅立ったり、過去にタイムスリップするのは、こういう世界を触媒にしている可能性も高いと、今は感じることが出来た。 もちろん、感じているだけで、この説が正しいと言える確証はどこにも無いのだが……。「灰皿をお持ちしますね」「……ああ」 バイオロイドの副官殿が、灰皿を持ってきてくれた。「……ふぅ」 気が付くと、手にした煙草は、真っ白になっていた……。☆★☆★☆「みんな、旅行に行くならどこがいい?」「海に行くポコ♪」「山に行くニャ♪」「温泉に行きたいですわ♪」「食べ放題に行きたいクマ♪」「釣りに行きたいメェ~♪」 改めて軍を退役し、暇がソコソコできたので、どこに行きたいか、みんなに意見を聞いたら、凄くばらばらだった。 幸いなことに、元帥の年金で行けないような候補地はないようだ……。 ……しかし、いつも勲功第一は副官殿なので、決議として温泉旅行へ行くこととなった。 近場では何なので、巡回や視察という名目で、新たに味方になった星系の中から候補地を選ぶ。 少し考えたところで、「う~ん、……ここが、いいかな?」「「「……」」」 鉱山用惑星カイロ。 航行費用の面などから考えて、ハンニバル開発公社の新開発案権の候補地から選ぶと、皆に白い目で見られた。 ……経費で宇宙船を飛ばすんだから、ある程度仕事絡みなのは、仕方ないじゃない? ハンニバルは私たちを乗せ、長距離跳躍を重ね、鉱山惑星カイロを目指した。☆★☆★
――古代アヴァロン王国。 今より200万年前に滅んだとされる伝説の超古代文明。 その文明は伝説であったのが、その文明の遺産が掘り出され、試験実用化されたことを契機に伝説ではなくなる。 未だに、エルゴ機関を始めとして、現代の科学では生産し得ない機器を遺産から提供する超文明国家である。 アヴァロン王朝の最後の王の娘が、ルドミラと言われており、ルドミラ教の女神として現在に伝わっている……。【カリバーン帝国参謀大学資料】……私は学習モニターを閉じる。 一応は参謀大学の学生なので、通信制の授業を受けているのだ。 難しい授業はまるで分らないが……。「提督ご飯の時間ポコ!」「は~い!」
「よろしくお願いします」「よろしくお願いします」 ……いつもの営業所の風景か。 同僚が電話口で必死に顧客に頼み込んでいるのだろう……。 ……うん? そういえば私は、会社にはもう出てなかったよな? ここはそもそもどこだ? 私は重たい眼を開くと、そこはハンニバルの艦長室だった。 私は少し寝ていたらしい。『提督!お願いします!』『よろしくお願いします!』 モニターに多くの方が映っている。 何かの陳情のようだった。「……これ、何なの?」 副官殿を呼んで尋ねる。「……あ、お休み中に回線がつながっておりましたか、申し訳ありません」「こちらは食料プラントの建設依頼の皆様でご
「重力圏進入と当星への着陸を認める!」「了解!」 ハンニバルはエールパ星系内の惑星リーリヤの管制部門に許可をとり、着陸モードへと移行する。「機関大気圏モード移行!」「……成層圏進入!」「逆噴射開始!」「安定翼制御良し!」 ハンニバルの大きな艦体が大気と擦れ赤色する。 耐熱タイルにミクロのヒビが入る……。「着水完了! 水上航行モードへ入ります!」「了解!」 ハンニバルは無事に沿海の海へ着水し、水上型の宇宙港へ向かう。 800mもの大型艦だったので、直接宇宙港へは着水できなかったのだ。 ……その後、港湾より上陸し、蛮王様の政庁へ乗り合いタクシーで向かった。☆★☆★☆
――戦争の勝敗とは、時代の定規が支配する。 時に数であったり、時に質であったり、それを振り返ることができるのは、勝者という結果の物差しだけなのである。 我々の住む世界で行われた戦争で、50年以上も前の場合は、とにかく兵力の数と物資の差が勝敗に与える影響が大きかった。 ……つまり数の歴史である。 しかし、現代はA国の一個の空母打撃軍や海兵隊戦車一個師団と対するのに、全世界の兵力を集めても敵わないとされている。 ……つまり質の歴史である。 あくまでも質や量、盾や矛、どちらが勝つのかは、それぞれの時代の勝者が結果的に定めるのである。 ……一体、この世界は何が勝敗を決めるのだろう?