宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

last update最後更新 : 2026-05-10
作者:  黒鯛の刺身♪剛剛更新
語言: Japanese
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故事簡介

一人称

転移

超能力

成長

モテモテ

人外

 毎日の仕事で疲れる主人公が、『楽な仕事』と誘われた宇宙ジャンルのVRゲームの世界に飛び込みます。  ゲームの中での姿は一つ目のギガース巨人族。    乗艦であるハンニバルは鈍重な装甲型。しかし、だんだんと改良が加えられていき……。  大出力レーザービームとミサイルが飛び交う艦隊戦。  更には突如現れるワームホール。  その向こうに見えたのは驚愕の世界だった……!?  様々な事案を解決しながら、ちっちゃいタヌキの砲術長と、トランジスタグラマーなアンドロイドの副官を連れて、主人公は銀河有史史上最も誉れ高いS級宇宙提督へと躍進していきます。

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第 1 章

第1話……ガラスの灰皿

……【よろしくお願いします】

『よろしくお願いします』

 うん?

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 ……いつもの営業所の風景か。

 同僚が電話口で必死に顧客に頼み込んでいる。

 少しばかり季節外れの扇風機の音もうるさい。

 お茶をいれるためのやかんの蒸気の音も聞こえた。

 営業所の備え付けのソファーで仮眠をとっていたことを思い出す。

「菱井先輩! 約束の時間です、起きてください!」

 ああ……。

 後輩に起すよう約束していたのを思い出す。

 自分の机に置いてある時計を見ると22:30だった。

 時計の隣には、二番目の兄が南米に墜落したと噂になった宇宙船モドキの横で笑っている写真が目に入る。

「先輩! 行ってきていいですか!?」

「ああ、いいよ」

 後輩の後藤は喜んで営業所を出ていった。

 しかし、他は誰一人として帰らない。

 今日は社を挙げたキャンペーンの最終日。我々は営業ノルマを達成せねばならなかった。

 ……30分後、支店長室。

「おう、菱井。新入りを帰させたようだな?」

「はい、とても大切な用だそうで……」

 ゴッ!!

 私がそう答えるや否や、私の心に鈍い音が響く。

 目の前をゆっくりと白い吸い殻が舞う。

 新島支店長のたくましい右手に握るガラスの灰皿が、私の左頬をしっかりと捉えていた。

 ……痛さによって、左ひざを絨毯に突く。でも手加減したのだろう、意識はある。きっと痛いだけだ。

「あと何ロットだ?」

「あと三つです!」

 私は膝をついたまま、鼻をすすりながらそう答えた。我々は反社勢力というわけではない。しかしこの本社工場が作ったキャンペーン企画商品を売り切らねば、明日にもこの僅か8名の支社は吹き飛び、この街の雇用が8名失われる。

 結局、世の中はそういったものだ。

 ひょっとすると私に愛と勇気が不足しているだけなのかもしれないが……。

「あと三つ何とかしてみせろ!」

「はい……」

 後藤を勝手に帰らせた手前、支店長にはそう答えるしかなかった。

☆★☆★☆★

 日付が変わるころ、私はコンビニにいた。

「……おっと」

 買おうと棚からとったチューブのショウガを床に落とす。

 疲れすぎて若干眩暈がする。

 左頬を冷やす氷も買わねば。

 こういう時、温かい家族を思い浮かべることがある。優しい妻に可愛い子供たち。

 しかし毎月の給料明細と残業時間が冷酷な現実を教えてくれ、きちんと目を覚ましてくれていた。

 いつか今よりもいい仕事に就けたら、きっと家族ももてるだろう。

 例の3ロットは結局知り合いの社長に買って貰った。こういう時、日ごろの接待の成果が如何なく発揮される。接待を馬鹿にする人の気持ちが知れない。

『結局何が大切なのか?』

 と自分に聞かれても知る由もないが、次の営業キャンペーンは3か月後にまたやって来る。後藤はせいぜい今のうちにデートを楽しめばいいと思った。

「いつもありがとうございます」

 孫が3人はいそうな店員にフレンドリーに挨拶される。

 ああいった老後もけっして悪くない。

 今、現場は人手不足だ。高校を出たばかりの後藤に『デートくらいで……』と言ってしまえば楽だが、それを言えば明日から過酷な営業を一人少ない七人でやる羽目になる。もちろん補充はない。

 過酷だ……な。

 バブル期に入社した業界の大先輩に『すまんな!』と冗談に言われるほど、我々の業界の現場は疲弊し切っていたのだ。

 帰宅した後、シャワーを浴びて寛ぐ。窓の外から流れる虫の声が実に心地よい。

 風流だな、自分も年をとったと自覚する。

 実はまだ20代なのだが……。

 グツグツとパスタが茹る音が聞こえる。

 PCで無料のWEB小説を眺める。

 頭が疲れすぎて、読むことはできないが……。

 PIPIPI……。

 突然に携帯電話が呻く。

 ……うるさい! 何時だと思っている!?

 しかし、誰だろうか?

【メールが着信しました】

 10歳も年の離れた二番目の兄からだった。

 支店長からという最悪のケースは避けることができた。

 しかし、なんにしろ疲れていて読みたくはない。

 が、祖母の家に引き取られ、母と私と弟にお金を送り続けてくれた兄なのだ。

 疲れていても、その恩に報いるべきだと一念発起してメールを開く。

 さもたいそうな理由だと自嘲もするのだが……。

 タイトルは『楽な仕事を紹介してやる』だった。

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暫無評論。
20 章節
第1話……ガラスの灰皿
……【よろしくお願いします】『よろしくお願いします』 うん? 「よろしくお願いします」「よろしくお願いします」 ……いつもの営業所の風景か。  同僚が電話口で必死に顧客に頼み込んでいる。  少しばかり季節外れの扇風機の音もうるさい。  お茶をいれるためのやかんの蒸気の音も聞こえた。  営業所の備え付けのソファーで仮眠をとっていたことを思い出す。 「菱井先輩! 約束の時間です、起きてください!」 ああ……。 後輩に起すよう約束していたのを思い出す。  自分の机に置いてある時計を見ると22:30だった。  時計の隣には、二番目の兄が南米に墜落したと噂になった宇宙船モドキの横で笑っている写真が目に入る。 「先輩! 行ってきていいですか!?」「ああ、いいよ」 後輩の後藤は喜んで営業所を出ていった。  しかし、他は誰一人として帰らない。  今日は社を挙げたキャンペーンの最終日。我々は営業ノルマを達成せねばならなかった。  ……30分後、支店長室。 「おう、菱井。新入りを帰させたようだな?」「はい、とても大切な用だそうで……」  ゴッ!!  私がそう答えるや否や、私の心に鈍い音が響く。  目の前をゆっくりと白い吸い殻が舞う。  新島支店長のたくましい右手に握るガラスの灰皿が、私の左頬をしっかりと捉えていた。 ……痛さによって、左ひざを絨毯に突く。でも手加減したのだろう、意識はある。きっと痛いだけだ。 「あと何ロットだ?」「あと三つです!」 私は膝をついたまま、鼻をすすりながらそう答えた。我々は反社勢力というわけではない。しかしこの本社工場が作ったキャンペーン企画商品を売り切らねば、明日にもこの僅か8名の支社は吹き飛び、この街の雇用が8名失われる。  結局、世の中はそういったものだ。  ひょっとすると私に愛と勇気が不足しているだけなのかもしれないが……。 「あと三つ何とかしてみせろ!」「はい……」 後藤を勝手に帰らせた手前、支店長にはそう答えるしかなかった。 ☆★☆★☆★ 日付が変わるころ、私はコンビニにいた。 「……おっと」 買おうと棚からとったチューブのショウガを床に落とす。  疲れすぎて若干眩暈がする。  左頬を冷やす氷も買わねば。    こういう時、温かい家族を思い浮かべることがある。
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第2話……楽な仕事
楽な仕事……そんなものはない。 少なくとも私の手に入る範囲では。 しかし、ないと分かっているから、気にもなる。 私はすぐに音声チャットを繋ぎ、兄に連絡をとることにした。 PCが映し出す画像に兄の姿が宿る。「おお! カズヤ元気か? てか、元気そうじゃないな?」「ええ……、兄さんはお元気ですか?」 少し日焼けした兄の顔を見ながら、雑談を少ししたあと本題に移った。 兄は雑談に時間を食うのを嫌うのだ。 雑談でさえ武器にせねばならない私とは違う人間、少しあこがれの人。「……で、やってみるか?」「うん、やろうかな? ……やろうと思う」「じゃあ、機器を送るな! またな!」 ほぼ用件だけの会話が終わる。 兄が好きな私には、少しだけ嬉しい時間でもあった。 楽しい時間が終わり、仕事の疲れが津波のように蘇る。「寝よ」「おやすみ」 誰に言うでもなく、明かりを消し床に就いた。☆★☆★☆★ 三日後の休日。 天気は曇り。少し薄光りが差し込める。 厳しい残暑が残る中、配達の方が汗だくになりながら運んできてくれた大きな荷物。 玄関のドアから入らないので、アパートの駐車場側から入れてもらった。 こういうとき、一階は便利だ。 防犯上嫌われるから家賃も安く、助かる。「有難うございました」 こうお礼を言う人は少ないみたいだが、私はつい言ってしまうほうだ。 宅配の方に丁寧に別れを告げた私は、大きな荷物の梱包を解いていく。 そこには全身がすっぽりと入るカプセルが現れた。 テレビで見たことのある酸素カプセル治療機器みたいだ。 正直な感想は『高そう』の一言に尽きる。 カプセル本体の横には、VRアミューズメント・バイタル・スペース株式会社とあった。簡易表記はVR・AVSというゲーム会社らしい。 ちなみに完全にオフレコではあるが、兄の話によるとこのゲーム会社『VR・AVS』は、C国の巨大医療機器メーカーA社の偽装子会社だそうだ。 我が国は高度に神経伝達可能な医療機器の認可は決してしない。しかし政府の規制緩和政策の一環として、VRゲーム機器に法の抜け穴があったのだ。 これにより長時間VRゲームをし続けた人間のデータが、ゲーム機器の形を通せばリアルタイムで合法的にとれるという訳だ。 契約上、一日8時間以上このカプセルに入ってVRゲームを行う。その間の
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第3話……艦長室の煙草
 ……【よろしくお願いします】 『よろしくお願いします』 うん?  結局すべてが夢で、支店のソファーで起きるという結末か……。それはとても現実的で嫌だなあと目を開くと、 「こちらに署名の方、よろしくお願いします」 光が差し込む眼の前に、制服を着た女性のような人がいた。なぜ【ような】という表現かといえば、肌が緑色なのだ。おおよそ間違いなく地球人ではないだろう。  トランジスタグラマーな彼女がさす出すタブレットには、軍人として【カリバーン帝国】に忠誠を誓うとの契約書が記されていた。下の方まで読むと、その忠誠の引き換えに人員の手配や給料の支給等も明記されている。御恩と奉公というやつだな。 「はぁ……しかし、この世界でも宮仕えか」「何か仰いましたか?」「あいや、なんでもないです」 差し出されたタブレットに慌ててKAZUYAとサインをした。 「え? ヴェロヴェマ様では?」「あ、そうでした。すみません」 どこの誰が自分の名前を間違うのだろうと自分に突っ込みを入れながら、頭をかきつつサインをなおした。  周りを見ると、小さな執務室の様だった。横には観葉植物がおいてあり、私の席は上座の様である。 「ここはどこ? あなたはだあれ?」「ここは艦長室です。私はヴェロヴェマ艦長の副官兼メイドのクリームヒルト准尉であります」 照れながら半ば冗談に聞いたら、素で戻ってきた。  手元の書類形式を見ると、私は中尉さんのようだ。小さいころ士官とかに憧れたことはあったが、実際そう呼ばれると恥ずかしい。しかしメイドという言葉に引っかかる。 「え? メイド? 私はメイドさんを雇うだけのお金をもっているのです?」「え?」 クリームヒルトさんは驚いたが、突如謎の声が割り込んできた。【システム】……ゲーム開始時の30日無料サービスクーポン分となっております。 あそう……この美人さんとも30日だけか。 その後、クリームヒルト様にいろいろと説明を受けた。  彼女の緑色の肌に銀色の髪という風貌には慣れてきたが、その事務的な口調には少しさめるところもあったが。  え?なぜ【様】かって?いや無料だからね。お金払ってないのにお世話をしてくれるからには、内心【様】扱いでいいかと。そう自分に突っ込んでいると、彼女の説明が終わる。そこで、 「クリームヒルトさんはどこからきた
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第4話……主砲斉射!
「あ……考え直さないか!?」「……」 所謂、一身上の都合という書類を支店長に渡すと、とても嫌がられた。自分も逆の立場だったら嫌だろうと思う。営業の基本戦力は結局のところ数なのだ。 「うん、しばらく休暇ということで行こう! な?」「わかりました」 私は支店長室をでて、戦友ともいえる仲間たちに少しだけ挨拶して支店を出た。 「あ、先輩……」「いや後藤、お前のことじゃないから」 後藤がビルの一階まで見送ってくれた。寂しそうな後藤の肩を優しく叩いた後、街角を縫い、逃げるように電車に飛び乗った。これは逃避かもしれない。電車の窓に流れる風景が私を笑っているように見えた。 ☆★☆★☆(……数時間後) 「どうぞ」「あ……ありがとう」 自分の席でぼんやりしていると、クリームヒルト様が珈琲をいれてくれた。有難いね。 「なにをやっているポコ?」「いや、この艦の名前と付けようとね。悩んでいるわけよ。良い名前ない?」 タヌキ軍曹殿に話を向けたが、 「自分で決めた方がいいポコ」「そうですわね……」 二人に否定されたため、仕方なく机にあるこの世界のPCのようなものを覗く。『宣伝』……今日のお昼ご【はん】は、ここ【に】! 焼肉【バル】とあった。 発想キター!! 「ハンニバルという名前はどうだろうか!?」「いいとおもいますわ」 「かっこいいポコ」 艦の名前は決まった。  後日カッコよくペイントされたが、絶対に命名の理由は言わないことにした。  その後、タヌキ軍曹殿に操艦を教わりつつ、しばし銀河を彷徨う。  宇宙とは星が沢山見えるが、その実本当に何もない世界だ。  目をつぶって飛んでいても、何にも当たらないくらい本当に何もない。  暫し遊弋を楽しんだ後、比較的近くにある辺境惑星フィリップスに立ち寄ることにした。  ……近いと表現するには、とんでもなく遠かったのだが。  惑星フィリップスの重力圏の手前に入ると、惑星フィリップスの管制より通信を受けた。 『貴艦の船籍を問う』『カリバーン帝国籍・HR379048ARです』 タヌキ軍曹殿がカリバーン帝国船籍であることを伝えると、 『船籍確認しました。艦長はヴェロヴェマ中尉ですか!?』『YES』  確認事項が終わると、誘導信号を受け取り大気圏に突入した。  雲を抜けた後に、惑星フィリップ
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第5話……次元跳躍
 レーザービームやミサイルを受け、小惑星は次々に粉々になっていった。  主砲の砲身が熱で少し赤くなり、ミサイル発射管の蓋も煤けている。 圧倒的な破壊力の前に、自分が少し強くなったような。  何の裏付けもない自信と、高揚感を手に入れてしまっていた。   もう一人の自分が、強く囁く……、 『冷静に成れ!』と。 ――  破壊した小惑星の破片の中に漂う装甲戦艦ハンニバル。  細かい岩石の破片を掃除しつつ、次なる目標に向かっていた。  その艦橋で、私は少し不満げな顔をしていた。「どうしたポコ?」「いや、エネルギーとミサイルが勿体ないなあと……」 横をそっと見ると、副官のクリームヒルト様が『あちゃ~』みたいな顔になっている。 ……ケチですまん!! 「じゃあ衝角攻撃するポコ」 タヌキ軍曹殿に説明を受ける。艦のシールドにエネルギーを最大化させて、体当たり攻撃をするとの事だった。  ちなみにシールドにエネルギーを注力しても、主砲に注力しても、結局はエルゴエンジンからのエネルギーが必要である。  つまり、この世界はエンジンの出力が大きければ、砲戦能力も防御能力も上がる構造だった。「両舷全速!」 ――ドォォォォン  艦が大きく揺れ、衝撃が走る。 しかし、無事ターゲットの小惑星の破壊に成功した!  実測したところ、レーザービームで破壊する25%のエネルギー消費で済んだ。 ……こっちの方が儲かんじゃね!?    まぁ、反撃してこない相手だからこそ成立する方法かもしれないが。 ☆★☆★☆ それから、人気のない小惑星破壊を毎日チマチマと10時間以上取り組んだ。もちろん現実世界の契約は一日8時間で良かったのだが……。 小惑星破壊の任務を達成するたびに、カリバーン帝国銀行の私の口座の残高が増え続ける。元が小市民ゆえに、ゲームの中とは言え口座の残高が増えるのが病みつきになっていったのだ。  小惑星破壊任務をはじめて20日くらいたった頃。 タヌキ軍曹殿と共に、副官であるクリームヒルト様にある提案をすることにした。    ……少し緊張する。  いや沢山か?  とことん小市民だな、と自分を笑った。 ☆★☆★☆「え? 雇用期間の延長ですか?」 クリームヒルト様はきょとんとした顔をしている。 「できれば我が艦専属でお願いしたい」「
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第6話……シェリオ伯爵
 マールボロ星系第四惑星シェリオの重力圏に到達。  データからするに、この星の人口は比較的多い。  衛星軌道上に小型の防御衛星が二つ、鈍い光を放ちながら鎮座していた。  管制に許可を得て降下に移る。  船体が大気と激しく擦れ、熱した空気が赤くなる。 厚い雲を潜り抜けて、海上に着水すると天気は雨だった。  遠くに稲光も見える。  惑星シェリオの宇宙港は海上停泊型だった。通常の船舶と同じ護岸に着く。  タンカーやら漁船などとすれ違って、内心楽しかった。 思いのほか、この世界の宇宙港は海上停泊型が多いらしい。  やはり海の上に浮かべた方が、古来より運用が易しいのだろうか?「では、またポコ♪」 「お気をつけて」 元気に手を振るタヌキ軍曹殿と、かしこまって頭を下げるクリームヒルト様。  働き詰めの彼等に24時間の休暇を出したのだ。 「ふぁ~」 彼等と別れ、久々に大きな伸びをした。  なんだか久しぶりの一人だ。  現実世界は独りのくせして……。 シェリオ伯爵の好物は分からないが、近くのお店でお菓子を買い求めた。  下に小判でも入れたら効果があるのかな?  少しそんなことを考えつつ、シェリオ氏の邸宅までハイヤーを飛ばした。「ヴェロヴェマ様ですね、お待ちしておりました」 守衛に取り次いでもらうと、まさしく執事のような初老の紳士の案内を受けた。  シェリオ氏の邸宅とは、中世のお城のようなモノだった。  古城というよりは、ヴィクトリア王朝だとかブルボン朝だとかいった華やかなイメージの宮廷に近い。  思わず、「すごいですねぇ~」 と言ってしまうと、「それは、この惑星シェリオの統治者ですから」 と初老の紳士に笑われた。  星を丸々統治するって、よく考えたら首相や大統領より偉いのだろうなぁって思ってしまった。  雨が映える庭をめぐる回廊を延々と歩かされたのち、とある大きな部屋に案内された。  部屋の中には高そうな絵や壺が沢山おかれていた。とてもお金持ちそうだ。  ふかふかのソファーで待っていると、それらしき人が来たので立ち上がり挨拶しようとすると、ジェスチャーでそれを制されたので、会釈をするに留めた。 ……その人が正面にドカッと座り、足を組む。 「ヴェロヴェマ君だっけか?」「はい、お初にお目にかかります。シェリオ伯爵
last update最後更新 : 2026-04-30
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第7話……有給休暇
 シェリオ伯爵との話し合いの結果を、タヌキ軍曹殿とクリームヒルト副官殿に説明する。  ちなみに惑星リーリヤを貰った話は、二人ともとても喜んでくれた。タヌキ軍曹に至ってはそこに家を建てるつもりらしい。  三人で少し早めの夕食をとることにした。  予約したのは少しだけリッチな洋風レストランだ。たまの陸上だから贅沢したいという理由で。  ――前菜のサラダを口にしながら話を進める。 「それでは、その惑星リーリヤにこれから向かうのですね?」 「向かうポコ?」「私は向かう、が、君たちは明日から二週間の休暇だ」「ぇ?」 「ポコ?」 二人ともビックリする。  私も上司に同じことを言われれば、とてもビックリするだろう。まさしく「クビか!?」と驚くに違いない。  しかし、シェリオ伯爵から貰った過去の勤務データによると、クリームヒルトさんは少なくとも23年もの間、働き詰めだった。アンドロイドとはいえ流石にこれは酷い。多分タヌキ軍曹もたいして変わらないのだろう。  よって、二人に二週間の有給休暇のなるものを味わって欲しかった。 「とても嬉しいのですが、これから惑星の新規開拓でお忙しいのではありませんか?」 「忙しいポコ」「いや、今とってほしい」 ……確かに今からは忙しいだろう。  しかし、しばらくたったら暇になるかと言えば、そうではない可能性が高い。その時も彼らの労力を当てにして、更に甘える上司である自分の未来の姿がはっきりと見えた。    自分が勤めた支店がまさにそうだったのだ。支店長が言う『次の機会に』は永遠に訪れない。自分がシェリオ伯爵や支店長のように、彼らを酷使し続ける未来だけは嫌だった。    亡くなった祖父が生前よく言っていた。  人に助けてもらいたいなら、まず自分から……だ。  不確定な未来より、今を成果として彼等に確実に何か与えるべきだった。 ……まぁ、一回有給休暇を与える偉そうな立場になってみたかったのもあるが。  結局は二人とも納得してくれたみたいで、メインディッシュのカモ肉料理が運ばれてくるころには、お酒もまわり、座も寛ぐ。  クリームヒルトさんは嬉しそうにタッチパネルを使い、近場のリゾート地を探している。  タヌキ軍曹は久々に郷里に帰るそうだ。なにやらスキーが楽しめるところらしい。いつか私も行ってみたいね。
last update最後更新 : 2026-05-01
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第8話……『ヘガクサイ』
 事情がよく呑み込めないが、とりあえず急いでハンニバルを減速停止させた。 しばらくすると、停船要請をしてきた船が見えてくる。 青と緑のカラフルなゼブラ模様のド派手な駆逐艦だった。 この世界の駆逐艦は、戦術短距離跳躍を活かした機動戦術を得意とする船だ。 決して弱い艦ではなく、むしろ上級者好みと聞く。 その駆逐艦は我がハンニバルの左前部にぶつかってきた。 ガラスをひっかくような衝撃と、鈍く赤い火花が飛ぶ。 油断せず空間シールドを展開しなかったのが悔やまれる。 ビデオチャットの受信を確認し応答すると、画面に現れたのは茶色の髪をした小柄な男だった。後ろには、げっ歯類の風貌の長身の赤髪の女性も見えた。「おう、ぶつけてすまんな、新入り! ちょっと入れてくれや!」 この男性をデータ照合すると、クラン・シェリオのNO2であるツイト子爵だった。後ろの女性はバニラ大尉。これもまたクラン・シェリオのメンバーだ。 ……正直、めっちゃ面倒臭そう。 気は進まなかったが、カリバーン帝国の士官は帝国貴族に真摯でなければならないとの規則がある。 しかたなく外部接続用のハッチにお出迎えすることにした。面倒ごとは起こしたくない。早めにお帰り頂こう。 正直、艦内戦闘に詳しいタヌキ軍曹がいなくて心細かった。――シュー 勢いよく蒸気圧が逃げ、ハッチが開く。 白い煙の中から現れたツイト子爵は、中折れ帽にサングラスといった服装で、大きな葉巻もくわえている。どこかのマフィアのような雰囲気である。 対して、後ろのバニラ大尉は普通に軍の制服だ。二人の服装のギャップが酷い。 ツイト子爵はノシノシと近づいてきた。「ほう、お前が熊被りの新人か!?」「は……、はぁ」「はぁじゃねぇよ! ボケ! 先輩よろしくおねがいします! だろ!?」「あ、よろしくお願いします」 艦に備え付けの簡素な応接セットに彼らを案内する。 お茶を入れ、備え付けのお菓子もお出しした。  その後、ツイト子爵にこのゲームにおける有難いお話を30分ほど頂く。内容は『新人は挨拶が基本』と『ここは学校じゃない、学生気分でやるな』の二つだけだったが。 一応中身は社会人なのだが……。 惑星を一個まるまる貰ったのだ、おとなしく聞いておこう。 ぷぅ~ シマッタ! 昨日食べたお芋のせいか、ぷ~がでた。「ぎゃはは!
last update最後更新 : 2026-05-02
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第9話……ブタの惑星
 ちゅんちゅん♪ ――雀たちの声で起きる。 私がすむアパートの裏側は畑だ。 ここの大家さんは農家なのだ。 ウチは小さな畑に付属する、更に小さなボロアパートといった具合だった。 『惑星リーリヤには先住民がいます』 これは大きな難問だった。――ゲームの世界じゃないか? そういった意見もある。 しかし私がお金を貰えるのは、今がゲームの中の住人でもあるからだ。 なんでもリセットできるという発想は好きじゃない。 近所の本屋に行き、先住民に関する逸話を買ってみた。 碌な話じゃない。 読む気が失せて、投げてしまった。――こういうときに、ふと思う。 有名な英雄や偉人なんて、本当に立派な人だったのかと……。☆★☆★☆ それから数日、小惑星破壊の仕事をしながら惑星リーリヤのデータを集めた。 惑星リーリヤ。緑と水に恵まれた惑星。 住民は二足歩行型のブタ民族。 科学文明レベルは低く、我々の世界の中世レベルといったくらい。 人口はかなり多め。 この星を実質的に統治するのは、蛮王ブルー。カリバーン帝国に所属。しかし、条件次第でカリバーン帝国に敵対する勢力に寝返る者は多いと聞く。 実際はおいといて、形式的な統治者はころころと変わっている。少し前まではシェリオ伯爵だった。彼らは皆、統治者としての支配に失敗していた。 ……で、現在の統治者は私という訳だ。 多分これは不良債権だな……。 惑星権利書を眺め呟いてみた。 結局というもの、惑星リーリヤに降下してみることにした。 考えても分からない、といった境地になったからだ。 大気圏に突入後、雲の隙間から海辺に大きなお城が見えた。石造りの城下町も見える。 地図データ通りなら、蛮王様の居城だ。 彼等を驚かせないように遠くに着水し、夜間に港湾施設に入った。 木造の船もあるし、近代的な風貌の船もある不思議な港だった。 しばらくすると、港湾内で小さなタグボートが近づいてきた。 レトロな感じのする外輪船だった。「いつまで停泊ですか?」 その船を操る恰幅の良いブタに聞かれる。ちなみに今の私の姿は一つ目の巨人族だ。「3日くらいかなぁ?」「では、大型艦3日で400帝国ドル頂きます」 港湾停泊料としてお金を支払った。 ハンニバルと私はそのタグボートに曳かれ港湾の奥に進んだ。 ちなみに1帝国ドル
last update最後更新 : 2026-05-03
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第10話……蛮王様とのお酒
――お酒 人類最古の友。 合法麻薬の一つとも言われ、数々の禁酒法を打倒し、未だに身近な嗜好品。 もちろん嫌いな人も大勢いるが、好きな人も大勢いるのも事実だろう。 たぶん健康に悪いのだが……。……調べたところ、この惑星の蛮王様はお酒が大好きとのことだった。 にこやかに、買ってきた高級ウイスキーを渡すと、「話が分かるな。では、晩にまた会おう!」 と言われ、追い返された。 その後、官庁街でお昼を食べる。 サラダ付きの定食にした。 陸上では新鮮な野菜を多く食べるのが、宇宙船乗りの習わしらしい。 約束の晩御飯にまで、散策して過ごした。 ここは石造りの家が多い、きっと地震が少ないのだろう。 その後、指定されたホテルの晩さん会に出向いた。 もちろん蛮王様主催だ。 ご存知のように、現代でも有力者はパーティー三昧だ。 知己増やし、有力者とも顔合わせする。 ビデオチャットを販売するIT企業の社長でさえ飛行機で飛び廻り、直接会って会食をするのだ。 主賓の挨拶が終わり、30分を過ぎたくらいに末席に座っていた私は別室に呼ばれた。 そこには椅子にゆったりと座った蛮王様がいた。「まぁ飲め!」「ありがとうございます」 心の底からお酒が美味しいかどうか聞かれたら、彼も私も違うのだろう。 かくいう私も、以前はあまりお酒を飲まなかった。 しかし、異文化である相手と素早く打ち解けるには、お酒の魔力を借りるというのが今までの人類の歴史だったのだろう。 杯を重ね、蛮王様も私も顔が赤くなっていく。「でだ、惑星の権利書の件だが……」「はい……」 唐突に本題が来る。 私は用意した権利書を見せ、条件を提示した。「鉱山開発の権利が欲しいだと?」「はい、是非にも」 蛮王様は髭をさすり、こちらの要望書を読んでくれた。 シェリオ伯爵をはじめ、いままでの権利者は間接統治を求めて失敗していた。 支配権を正当に認めてやるから、沢山の分け前をよこせといった手口だ。 相手からすれば、いきなり権利書を片手に『金よこせ!』といわれても納得しないのが普通だが、誰しも『権利』という強大な力を手にすると、相手の気持ちを考えにくくなるものだ。  しかもこの惑星には戦略資源ともいえるミスリル鉱石を産出する。この鉱石で作った超硬質鋼材は特殊なバクテリアを飼うことができ、痛ん
last update最後更新 : 2026-05-05
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